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最初のボスは会場外にいた──見知らぬ駐車場と灼熱の待機列
今年も来たぞ東京ゲームショウ、しかもビジネスデー。

華やかなブース?最新タイトル?違う違う、その前に立ちはだかる真のラスボスの話をしよう。名前は「待機列」。しかもただの待機列じゃない。気づいたら「ここどこ?」ってなるタイプのやつだ。
例年の経験から早め行動を心がけたはずなのに、誘導されるがまま歩き続け、着いた先は見覚えのない駐車場。展示ホールの気配ゼロ。視界に広がるアスファルト、照り返す太陽、そして同じ顔をした参加者たち。「俺たち、本当にゲームショウに向かってるんだよな…?」という無言のアイコンタクトが最後尾のそこかしこで交わされる。
暑さは静かにHPを削ってくる
この日の敵は明確だった。気温。日差し。あと地面からの反射ダメージ。まだ何もしていないのに、体力ゲージがじわじわ赤くなる感覚。イベントは会場に入ってからが本番?甘い。TGSは並んだ瞬間からもう始まっている。戦闘はフィールド上で発生しているのだ。

そんな極限環境の中、視界に入ったのが自販機の横に佇む「17アイス」。救世主か。いや違う、これは罠だ。食べたい。めちゃくちゃ食べたい。でもここで食べたら口の中だけ南国、体は地獄のままというアンバランス状態になる。理性と欲望のコマンド選択が発生するとは思わなかった。ゲームショウ前にQTEやらされるとは。
すでに“攻略”は始まっている
ここで気づく。TGSは展示を見るイベントである前に、「消耗を管理するゲーム」でもあるということに。日陰の位置、風の通り道、列の進み具合、水分の残量。全部がステータス管理だ。並んでいるだけなのに、頭の中は完全にサバイバルモード。これを乗り越えられないと、中の最新ゲームどころではない。
つまり、最初の関門はブースでも試遊でもなく、この“名もなき駐車場フェーズ”。ここをどう耐えたかで、その日の行動力が決まる。東京ゲームショウ2025、開幕の舞台はすでに戦場だったのである。
情報より先に削られる、1泊2日TGS最大の敵「体力」という現実
会場に入った瞬間、「よし、ここから本番だ!」と思った人。残念、それはまだチュートリアル終了の合図にすぎない。本番はここからの“持久戦”である。東京ゲームショウは情報の祭典だが、同時にフィジカルの選別イベントでもある。つまり、知力より先に体力が問われる。
今年は例年の反省を活かして1泊2日体制。これで余裕だろうと思っていた自分を、開始2時間後の自分が全力で殴りに来る。重いバッグ、歩きっぱなし、立ちっぱなし、常に人の流れに逆らわない移動。まだ午前中なのに「今日もう帰っても許されるのでは?」という悪魔のささやきが脳内に発生する。ビジネスデー、油断すると心が先にログアウトする。
削られるのは足より“判断力”
怖いのは筋肉痛じゃない。思考力の低下だ。疲れてくると「とりあえず並ぶ」「なんとなく見る」という行動が増える。これが一番まずい。TGSは広い、そして人が多い。無目的移動はスタミナを溶かす最速ルート。気づいたら何も達成していないのにHPだけがゼロに近づいている。これはゲームで言うところの“無駄エンカウント地獄”である。
さらに罠なのが、視界に入る巨大モニターと派手な演出。「お、あっちすごそう」と進路変更を繰り返しているうちに、足がじわじわ悲鳴を上げる。情報量の多さは興奮を生むが、同時に判断を鈍らせるノイズにもなる。気づけば脳がショート気味。人は疲れると、光っている方向に引き寄せられる生き物らしい。
“回復アイテム”の重要性
だからこそ、水分、軽食、座れるタイミングの確保がガチで重要になる。これを怠ると午後の自分が完全に別人になる。午前の「全部回るぞ!」という主人公感は消え、午後は「ベンチ…ベンチはどこだ…」とつぶやくモブになる。TGSはロールプレイングゲームだが、回復魔法は自分で用意するしかない。
結局のところ、最新ゲームに触れる前に試されているのはプレイヤーのコンディション管理能力。体力が尽きた瞬間、展示は“見えるけど体験できない風景”に変わる。東京ゲームショウとは、情報戦の皮をかぶったスタミナ管理シミュレーターなのである。
全部は回れない。目的を絞った瞬間にゲームショウは“攻略対象”になる
体力が有限だと悟った瞬間、次に必要になるのは覚悟だ。そう、「全部は無理」という現実を受け入れる覚悟である。東京ゲームショウに来ると人は欲張る。「せっかくだから」「ここまで来たし」が発動し、気づけば地図上に行きたい場所がびっしり。だがその状態、すでに敗北フラグが立っている。
会場マップを広げたときのワクワク感は異常だ。巨大ブース、新作タイトル、気になるメーカー、見覚えのあるロゴ。視界に入るもの全部がイベント対象。だがここで冷静になれるかどうかが分岐点になる。TGSは遊園地ではない。限られた行動力をどこに振るか決める“戦略ゲーム”だ。
「ついで」が一番コスト高い
一番危険なのが「近くだから寄ってみよう」である。これが積み重なると、移動距離がとんでもないことになる。ホールを横断し、列を確認し、やっぱやめて戻る。この“やっぱやめた移動”が体力を溶かす真犯人だ。結果、時間もスタミナも消え、最初に本当に見たかった場所に行く頃にはHPが黄色点滅している。
だから今年は割り切った。最優先目標を最初に決める。それ以外は“余裕があれば”。この順番にするだけで行動が劇的に変わる。迷いが減る。立ち止まる時間が減る。精神的な消耗が減る。人混みの中で「あれもこれも」と考え続けるのは、それだけで脳のスタミナを削る行為だったと気づく。
絞ると逆に満足度が上がる不思議
面白いのは、回った数が減っても満足度は下がらないどころか上がること。目的を達成できた実感があるからだ。逆に、たくさん見たのに印象がぼんやりしている年は、だいたい無計画に歩き回っていた年。情報量が多いイベントほど、選ばない勇気が必要になる。


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東京ゲームショウを攻略するコツは、強くなることではなく、無駄に戦わないこと。二兎追うものは一兎も得ずは本当だった。全部見ようとした瞬間、このゲームは詰む。絞った人間だけが、最後に「来てよかった」と言えるステージに辿り着けるのだ。
試遊重視の空気、中国企業の存在感、そして現場で出会った“人の熱”

目的を絞って動き始めると、会場の見え方が少し変わってくる。ただの巨大イベントではなく、「今年のゲーム業界の空気」がじわじわ伝わってくる場所になる。今年特に感じたのは、ノベルティをとにかく配って人を止める、という空気が以前ほど強くなかったことだ。その代わり、ブースの中心にあるのは明らかに“試遊”。触ってもらってナンボ、という潔い姿勢が目立っていた。
派手な袋をいくつも抱えて歩く人の姿より、真剣な顔でコントローラーを握る人の姿の方が印象に残る。並ぶ理由が「もらえるから」ではなく「遊びたいから」に寄っている感じ。これは参加者としてもありがたい変化だ。体力を使うなら、やっぱり体験のために使いたい。
力技で殴ってくる存在感
その中でひときわ目を引いたのが中国企業のブース。規模、演出、物量、とにかくパワーがある。視界に入った瞬間に「でかい!」が先に来るタイプの存在感。技術力や映像表現のレベルも高く、もはや“海外枠”というより、普通にメインストリームの一角として立っている感覚だった。ゲームショウの勢力図が静かに塗り替わっていく様子を、現場で目撃している感じがある。
最後に残るのは“人”の記憶

新作エヴァンゲリオンのスタッフ名を連ねるヨコオタロウさんの名前も!
それでも、一日の終わりに強く残るのは巨大スクリーンより人の対応だったりする。今回ありがたかったのが「ゲームゲノム」のディレクターさんの神対応。忙しいはずなのに、こちらの話をちゃんと聞き、言葉を返してくれる。その姿勢に、番組が多くの人に支持されている理由を見た気がした。コンテンツの裏側にいる人の温度は、思っている以上に伝わる。

そして地味にうれしかったのが物販のスムーズさ。例年の覚悟が肩透かしになるくらい流れが良く、疲れた体でもなんとか最後の買い物まで辿り着けた。体力、戦略、判断、そして少しの運。いろいろ試された一日だったが、外に出たときには不思議と「また来るんだろうな」と思っている自分がいた。東京ゲームショウはやっぱり、しんどさ込みで楽しい場所だ。
